Thursday, November 12, 2009

5 Centimeter Per Second episode 3 秒速5センチメートル 1/2



今振り返れば きっとあの人も振り返ると 強く感じた

中央総武最終電車東京行きが到着します

お正月までいればいいのに
うん でもいろいろ準備もあるから
そうだな 彼にもうまいものつくってやれよ
うん
何かあったら電話するのよ あかり
大丈夫よ
来月には式であうんだから そんなに心配しないで
寒いからもうもどりなよ

夕べ、昔のゆめを見た
わたしも彼も まだ子供だった
きっと 昨日見つけた手紙のせいだ

水野さん
あ、はい
ミーティングいいかな
はい

ただ 生活をしているだけで 悲しみはそこここに積もる
日に干したシーツにも 洗面所の歯ブラシにも 携帯電話の履歴にも

''あなたのことは今でも好きです''
三年間付き合った女性は そうメールに書いていた
''でもわたしたちは きっと 1000回もメールでやり取りして 心は1センチくらいしか近づけませんでした''
と……

この数年間、とにかく前に進みたくて届かないものに手を触れたくて それが具体的に何を指すのかも ほとんど脅迫的ともいえるその思いが どこからわいてくるのかも分からずに ぼくはただ働き続け 気づけば日々弾力を失っていく心が ひたすらつらかった
そしてある朝、かつてあれほどまでに真剣で切実だった思いが きれいに失われていることにぼくは気づき もう限界だと知ったとき 会社を辞めた

昨日、夢を見た

ずっと昔の夢

その夢の中では

ぼくたちはまだ13歳で

そこは 一面の雪に覆われた広い庭園で

人家の明かりはずっと遠くに まばらに見えるだけで

降り積もる新雪には わたしたちの歩いてきた足跡しかなかった
そうやって

いつかまた 一緒に桜をみることが出来ると

わたしも 彼も

なんの迷いもなく

そう思っていた

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